相続に関わる税金対策について

生前贈与する際の注意点ルール変更に伴う対応は、専門家にお任せください

代表弁護士山田 冬樹
<監修者> 代表弁護士 山田 冬樹
依頼者が「やってほしいこと」と、弁護士が「できること」をすり合わせ、依頼者の納得を得ながら、現実的にできる最大限の成果を目指し、最終的に「この人に頼んでよかった」と思われるように努めています。

相続税法改正で納税義務者が増加

2015(平成27)年1月から、相続税法の改正により、基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったのが、「3000万円+600万円×法定相続人数」にと、改正前の6割となりました。相続財産が基礎控除額を下回る場合は相続税の支払いは不要ですが、上回る場合は相続税を支払わなければなりません。

生前贈与の利用

将来、相続人たちが負担する相続税の金額を減らすための方法の1つに、生前贈与があります。例えば、母が子供に現金を生前に贈与して、現金を減らしておけば、その分相続財産が減り、相続税も減らすことができます。

ただ、贈与税の方が相続税より税率が高いため、贈与を受ける人は、贈与税の基礎控除額をうまく利用する必要があります

この点、年間110万円以下は贈与税がかからないため、毎年110万円を贈与すれば、「理屈の上では」贈与税を払わなくて済むうえ、相続財産も減らすことができます。子供が3人いれば毎年1人につき110万円贈与することで「理屈の上では」330万円の相続財産を減らすことができることになります。

ここで注意していただきたいのは、父母がそれぞれ110万円贈与した場合は、子1人当たり220万円受け取ることになってしまい、110万円につき贈与税を払わなければならなくなることです。

名義預金とは

実際には、生前贈与として、親が子供の口座に毎年お金を振り込んでいる場合、その子供の預金が、親の預金とみなされて、相続税が課せられていることが多くあります。というのも、「子供に多額のお金を渡して無駄遣いをしては困る」ということで、多くの方が、子供に通帳や届出印、カードを渡さず、自分で保管してしまっているからです。

こういう預金は、名義は子供であっても、実質的には親が管理する親の預金であるため、「名義預金」といいます。名義預金は、親が亡くなった時に、親の相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。

そもそも贈与とは契約です。親が「お金をやるよ」、子供が「お金をもらうよ」と、それぞれが意思表示をすることで、はじめて法律上の贈与契約が成立します。子供が知らないうちに預金を積み立てられていたということになると、そもそも贈与とはいえないのです。

名義預金とされないための方法

それでは、名義預金とされないためには、どうすればいいのでしょう。ここでは3つの方法をご紹介します。生前贈与をご検討の方は、ぜひ実践してください。

(1)贈与契約書を作成する

親と子、双方が署名押印する必要があります。ちゃんとお子様に自筆で署名してもらい、判もお子様が日常使用する判にしてください。パソコンで名前を打って、三文判を押しただけでは、本当にお子様が契約したのか疑われてしまいます。

(2)子供が自分で開設した預金口座に振り込む

子供の住所の近くの支店ではなく、親の住所の近くの支店の預金口座に入金すると親の名義預金と疑われます。

(3)通帳、カード、印鑑を子供本人が管理する

給与の振込先口座に入金すれば、名義預金と疑われにくいでしょう。仮に、お子様の無駄遣いを心配するのであれば、お子様自身がその口座から別の貯蓄用の口座に贈与された金額を振り替えるようにすればいいでしょう。

税金逃れとみなされないために

非課税枠いっぱいの110万円の贈与を毎年繰り返していると、税金逃れとみなされることがあります。

国税庁のホームページにも「10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です」とあります。

参照:国税庁ホームページ「毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合」

そのため、実際は、毎年同じ時期に同じ金額の贈与を継続的にしているだけの場合でも、「本当は1000万円を10回の分割で贈与したのだろう」とみなされ、1000万円について贈与税がかかってしまうことがあるのです。

これを防ぐためには、110万円を超える贈与をし、贈与税を納めることも一つの方法です。例えば、子供に120万円贈与し、長男が税務署に申告して1万円の贈与税を納めます。これが贈与があったことの証拠になるわけです。慎重な方は、毎年贈与する金額を変えることもしています。

「贈与契約書」のフォーマットは、こちらです。相続税対策にぜひご利用ください。
贈与契約書/生前贈与契約 ひな形

孫に直接贈与した場合

子供ではなく孫に直接贈与した場合は、贈与税自体が発生しないことがあります。この点、民法第877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定しています。孫の教育費を祖父が支払うことは、扶養義務を果たしたことになるのです。

国税庁のホームページにも「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」には贈与税がかからない旨明言されています。

ただ、ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいうため、家や車の購入費はこれに当たりません。また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

同ホームページに「生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります」とあるように、子供の住居の家賃を直接自分名義の預金から振り込む、あるいは子供の学費を直接振り込む等、贈与されたお金がちゃんと生活費、教育費に使われた証拠を残すべきです。

参考:国税庁ホームページ「贈与税がかからない場合」

教育資金の贈与の特例

このほかに、教育資金の贈与の特例制度があります。もともと教育費は、その都度渡して使い切る場合には贈与税はかかりませんが、この特例を利用すると「一括で」「すぐに使わなくても」、子や孫1人につき1,500万円までの贈与は非課税になります。

お子さんの教育費は都度支払われるでしょうから、実際には孫への教育資金の贈与に活用されています。2019(平成31) 3月31日までの特例でしたが、2019(平成31)年の税制改正で、その後も延長され、2023(令和5)年に対象期間が2026(令和8)年3月31日までに延長されました。

ただ、この特例を利用するためには、金融機関と信託契約を結んだうえで、金融機関に教育資金を移転し、金融機関が教育費に使う目的に従って管理する必要があるなど、仕組みが複雑なため、税理士や金融機関に相談したうえで利用することをお勧めします。

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