相続財産について(何を相続するの?)

何を相続するの?

相続人は、相続開始の時から、亡くなった人の財産に属した権利義務を引継ぎます(民法896条)。
亡くなった人の遺産を、相続財産といいます。
相続財産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

相続財産には、次のようなものが含まれます。

相続財産となるもの相続財産にならないもの
プラスの財産 土地・建物
貴金属
株式・有価証券・出資証券
現金・預金
貸付金
借地権・借家権
ゴルフ会員権
損害賠償請求権 など
遺族給付金
生活保護受給権
香典
祭祀関係
一身専属権
生命保険金(受取人が法定相続人以外) など
マイナスの財産 借金
連帯保証債務 など
一身専属的な保証債務 など

主な財産の相続における取り扱い

預金

家や車はこれを相続人で分けると言っても物理的に無理ですが、預金の場合は機械的に分割が可能です。そのため、最高裁は、預金は法定相続分にしたがって、当然に分割されるとしています。

例えば、A銀行の普通預金300万円が相続財産としてあり、子3人が相続する場合、1人100万円ずつの預金を相続することになります。
甲、乙、丙の3人の子が相続人の場合、甲が自分の法定相続分を主張して、A銀行に対して100万円払えと言えば、A銀行は払わなければいけないのです。しかし、実際には、甲は乙、丙が実印を押した「甲が1人で100万円を受け取ってよい」という承諾書を持っていかない限り、A銀行は後々乙、丙とトラブルになるのを恐れ、絶対払い戻しに応じません。
相続人の1人が単独で銀行から払い戻しを受けるには、訴訟を起こすしかありません。
訴訟になれば、たいていの銀行は判決までいかなくとも、相続分を払う内容で和解してくれます。

不動産

家や土地が相続財産としてある場合、それを切り分けることは無理ですから、売って得たお金を相続人間で分けるか、誰かが単独で相続し、その代わり他の相続人には金銭補償(代償分割金)をするやり方がとられるのが普通です。

代償分割金を渡す場合、その不動産の価値をいくらと見積もるかが重要です。
相続税申告書には、不動産の価格が表示されているため、これを基準にすることがよくありますが、そこにある不動産の評価額は、土地については路線価、建物については固定資産税評価額が基準となっているため、実際の市場価格より低くなっているのが普通です。ですから、代償分割金額を正確に把握するのであれば、不動産屋さんに建物をいくらで売れるか評価してもらい、それを基準に分割代償金額を決めると良いでしょう。

不動産を単純に共有登記にするやり方もありますが、後に紛争を残すことになりかねません。

車が相続財産としてある場合、その車が価値のある車であればいいのですが、年式が古く無価値の車の場合、却ってお荷物になるだけです。
通常車を廃車にするためには相続人全員が実印を押した遺産分割協議書等を提出し、1人がその自動車を相続し、その1人が廃車手続きを行うというのが原則です。

しかし、査定価格が100万円以下の車の場合は、相続人の1人が単独相続したとする「遺産分割協議成立申立書」を提出すれば名義変更をすることができ、その後廃車手続きをとればよいものと思われます。同申立に書には次のような文言を書く必要があります。
「被相続人の死亡により、被相続人所有の上記自動車について民法の規定に基づき 遺産分割協議を行なったところ、私が上記自動車を相続することに協議が成立したので申し立てます。また、当該移転登録について、本申立書により申請する旨同意を得られたので今回の申請に及びました。なお、本申立について問題が発生した場合は、私が責任をもって処理し、貴職には一切ご迷惑をかけないことを誓約いたします」。

株式

株は預金と違い、法定相続分に応じて分割されることにはならず、個々の会社の株式ごとに相続人が共有することになります。
上場している株式であれば、処分してお金に換えて、分けることが可能ですが、被相続人が経営しているような非上場会社の株式の場合、売って分けることができません。ですから、その会社の後継者がその株全部を引き継ぎ、その代わり代償分割金を他の相続人に支払うのが普通です。

この場合、相続税申告書に記載ある株式の評価額に基づいて、代償分割金を計算することが普通行われていますが、この金額は必ずしも正確なものではなく、実際の価格より低いことがあります。
ですから、会社が巨額の収益をあげているにもかかわらず、評価額が低廉と思われる場合は、税理士ないし公認会計士に依頼して、株価を評価してもらう必要があります。ただ、評価のためには会社の貸借対照表、損益計算書等の精査が必要になるため、こうした資料が入手できないと、その計算もできないことになります。

生命保険

被相続人が契約し、自分を被保険者とし、法定相続人の1人を保険金の受取人に指定していた場合、被相続人が死亡すると、その受取人だけが保険金を受け取ることになりますが、この保険金は相続財産として遺産分割の対象になるのでしょうか。
この点、判例は、生命保険金は、保険契約の効果として、指定された保険金受取人が直接取得するものなので、相続財産には含まれないとしています。

生命保険が相続財産となる場合

しかし、生前、財産の大部分を保険料の支払いに充てていたというような場合、他の相続人は遺産を殆ど受け取ることができず、大きな不公平を生じます。
このため、生命保険金は特別受益に当たるのではないかとの議論がでてきます。

最高裁平成16年10月29日付決定は、生命保険金は、原則として特別受益にあたらないものの、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条(特別受益を規定)の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となる」としました。

それでは、不公平の程度が著しいかどうかをどのように判断すればいいのでしょうか。
同最高裁判決は次の点を総合考慮して判断すべきである、としています。
①保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率
②同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合い
③各相続人の生活実態
ただ、経済的不公平をただすという特別受益の趣旨からすると、①が最も重要と考えられます。生命保険の額が遺産総額の半分を超えるようですと、著しい不公平ありとされる可能性が高まるでしょう。

なお、生命保険金は相続税法上、みなし相続財産として、相続税の課税対象となります(但し控除制度あり)。
民法では法形式的な思考が重視されるのに対し、税法では経済実質的な思考が重視されるため、法的評価が大きく分かれることよくがあります。生命保険の取り扱いはその最たるものの1つでしょう。

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