特別受益・寄与分

特別受益の持戻しと持戻し免除

特別受益の持戻しとは?

被相続人(亡くなった方)から生前に贈与を受けたこと等により、特別受益が認められる相続人がいる場合、相続財産にその特別受益の金額を加えたものを、相続財産とみなして遺産の分割を行ないます。相続財産に特別受益の金額を加えることを「持戻し」と呼んでいます。

特別受益の持戻し免除

ただ、この「持戻し」は免除することができます。被相続人が、持戻しをしなくてよいという意思を表示(持戻し免除の意思表示)していたと認められる場合には、持戻しする必要はありません。

持戻し免除の意思表示の方法

生前贈与についての持戻し免除の意思表示には、特別の方式は必要ありません。一方、遺贈についての持戻し免除の意思表示については、遺言によってされなければならないという考え方と、遺言によることを必要としないという考え方があります。

生前贈与において、持ち戻し免除の意思表示が明示的になされることは少ないため、多くの場合、黙示の意思表示があったかどうかが争われます。

黙示の意思表示

生前贈与において、黙示の意思表示があったかどうかについては、贈与の内容・価額、贈与の動機、被相続人と受贈者との関係、被相続人と相続人の経済状態、他の相続人との関係、他の相続人が受けた贈与の内容・価額等を総合考慮して、判断するものと考えられています。

以下のような場合には、持戻し免除について、黙示の意思表示があったと認められやすいと言えます。

  • 特定の相続人により多くの遺産を取得させようという意図で生前贈与がなされた場合
  • 各相続人に同程度の生前贈与を行っている場合
  • 自立して生活することが困難な者に対して、将来の扶養を目的として生前贈与を行っている場合
  • 生前贈与した代わりに被相続人が何らかの利益を得ている場合

持戻し免除の意思表示の撤回

一度持戻し免除の意思表示を行った場合でも、被相続人はそれを自由に撤回することができると考えられています。

持戻し免除の意思表示と遺留分

仮に、持戻し免除の意思表示がなされたとしても、免除がなされると他の相続人の遺留分が侵害される場合には、侵害する限度で免除は認められず、贈与された財産の価額は遺留分算定の基礎となる財産額に算入され、遺留分侵害額請求(改正前の減殺請求)の対象になると考えられています(最一小決平成24年1月26日)。

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代表弁護士 中原俊明 (東京弁護士会所属)
  • 1954年 東京都出身
  • 1978年 中央大学法学部卒業
  • 1987年 弁護士登録(登録番号:20255)
  • 2008年 法律事務所ホームワン開所

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