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相続分と遺留分について(どれくらい相続するの?)希望と実態が異なる場合もあり要注意
法律上、誰がどのくらい相続するかが定められていますが(法定相続分)、亡くなった人の遺言書によって自由に相続分を定めることもできます(指定相続分)。
遺言書は、亡くなった人の意思であり、相続財産の相続分は、遺言書の内容が最優先されます。ただし、もし仮に、「自分が死んだら、愛人に全財産をあげる」というような内容の遺言書があれば、残された家族は生活に困窮してしまいます。そのため、民法では、残された家族の生活のため、最低限相続できる財産を「遺留分」として保証しています。
法定相続分・指定相続分とは
法定相続分とは
各相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を引き継ぎます(民法899条)。ですので、どれだけ相続するかは、基本的には、「法定相続分」に従います。「法定相続分」とは、民法で定められた取り分の割合のことです。
配偶者は常に相続人となりますので、以下では、配偶者とそれ以外の相続人がいる場合を、ケースごとに説明します。
(1)子が相続人になる場合(第1順位)
配偶者と子が相続人の場合は、配偶者が2分の1、子は2分の1を子の人数で割った割合が法定相続分となります(民法900条1項、4項)。
(2)直系尊属が相続人になる場合(第2順位)
配偶者と直系尊属(両親、両親死亡の場合は祖父母など)が相続人の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を直系尊属の人数で割った割合が法定相続分となります(民法900条2項、4項)。
(3)兄弟姉妹が相続人になる場合(第3順位)
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を兄弟姉妹の人数で割った割合が法定相続分となります(民法900条3項、4項)。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹は、双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1が法定相続分となります。
指定相続分とは
これに対して、被相続人が遺言で定めた相続分のことを、指定相続分といいます(民法902条)。指定相続分は、被相続人の最終意思に基づくものであることから、法定相続分に優先します。
遺留分とは
遺留分とは、一定範囲の相続人が最低限もらえる遺産の取り分です。これは、相続人の生活保障のために相続人に法律上認められた利益であるため、被相続人は、遺言によって相続人の遺留分を侵害するような遺産の処分行為を行なうことができません。
そのため、遺言によって遺留分を下回る遺産しかもらえなかった相続人は、遺留分侵害額請求を行い、権利の回復を図ることができます。
遺留分の請求
遺留分権利者と遺留分の割合
遺留分を請求できる相続人(遺留分権利者)は、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子およびその代襲相続人、直系尊属)です。
総体的遺留分
総体的遺留分とは、遺留分権利者全体に遺されるべき遺産全体の割合のことをいい、民法1028条では、総体的遺留分を次の通り定めています。
直系尊属(被相続人の親、祖父母等)のみが相続人である場合 | 被相続人の財産の3分の1 |
---|---|
その他の場合 直系卑属(被相続人の子孫)のみ、配偶者のみ、配偶者と直系卑属、配偶者と直系尊属 |
被相続人の財産の2分の1 |
個別的遺留分(計算の仕方は?)
個別的遺留分とは、遺留分権利者が複数いる場合の各遺留分権利者の個人的遺留分の割合をいい、総体的遺留分に、それぞれの遺留分権利者の法定相続割合を乗じることによって算定されます。
被相続人に、妻、長男、長女がいる場合、総体的遺留分は被相続人の財産の2分の1となり、個別的遺留分は、妻が4分の1(1/2✕1/2)、長男と長女がそれぞれ8分の1(1/2✕1/4)となります。被相続人に、妻、子はおらず、父母だけがいる場合、総体的遺留分は被相続人の財産の3分の1となり、個別的遺留分は、父母それぞれが9分の1(1/3✕1/3)となります。
遺留分侵害額請求権(処分された財産を取り戻す)
遺留分は、一定範囲の相続人が最低限もらえる遺産の取り分ですので、遺言や生前贈与によって、自己の相続分がこれを下回った場合には、遺留分侵害額請求をすることができます。(民法1046条)。
また、侵害額請求の対象となる生前贈与は、相続人以外になされた場合、相続開始前の1年間になされたもの、相続人の場合、相続開始前の10年間になされたものが含まれます。また、当事者双方(贈与者と受贈者)が遺留分権利者(相続人)に損害を与えることを知りながら行った贈与の場合は、それよりも前であっても含まれます。
侵害額請求のやり方に指定はなく、侵害者に対して侵害額請求の意思表示をするだけで足りますが、後の裁判に備えて証拠となるように、内容証明郵便で行うことが一般的です。遺留分侵害額請求は、遺留分権利者が、相続の開始及び侵害額請求すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内、または相続開始の時(通常は被相続人死亡の時)から10年以内に行う必要があります。