相続に関わる税金対策について

贈与税について贈与税についてよく理解し、相続税対策に備えていきましょう

弁護士奈良 洋
<監修者> 協力税理士 奈良 洋
税制は毎年のようにめまぐるしく変わります。改正点をお客様にわかりやすくお伝えするとともに、どのように対応していくのか、依頼者様の意向に沿ったご提案をしていきたいと考えています。

贈与とは

財産を贈りたい人(贈与者)が、自己の財産を無償で、他の誰か(受贈者)に与える意思表示をして、受贈者がそれに同意した場合に成立する契約のことです(民法549条)。

贈与税とは

贈与により財産を取得した人が、その取得した財産の評価額に応じて支払う税金です。

相続税が死後の財産所有権移転時に課税されるのに対し、贈与税は、生前の財産所有権移転時に課税されます。贈与により相続財産を減らし、相続税を減免しようとする行為に歯止めをかける目的があることから、贈与税は相続税の補完税であると言われます。

贈与税は、暦年課税で基礎控除額年110万円を超える部分の金額に課税(税率10%~最高55%)されますが、生前贈与をうまく活用することによって、相続税と贈与税の総額を少なくすることが可能です。

納税すべき人とは(納税義務者 相続税法1条の4)

贈与により、財産を取得した人(受贈者)

みなし贈与財産とは【注意!】

民法上では贈与された財産に当たらなくとも、贈与と同じような経済的利益があることから税法上贈与された財産とみなされて課税される財産のことです。主なものは、以下のとおりです。

信託受益権 委託者以外の者を受益者とする信託行為があった場合(遺言によって信託があったとき、信託を委託した人(被相続人)以外の人が信託からの利益を受ける場合)の信託受益権が、みなし相続財産となります(相続税法6条)。
生命保険金 保険料を負担していない者が、被相続人以外の第三者が負担していた保険料に係る満期保険金等を取得した場合、受領した保険金がみなし贈与財産です(相続税法5条)。
低額譲受 時価より著しく低額での財産譲渡(売買)を行った場合、時価と譲渡(売買)価格の差額がみなし贈与財産とされます(相続税法7条)。
債務免除等 たとえば、子の借金を親が返済した等、無償で借入者(子)が債務を免除された場合、第三者(親)が返済した金額がみなし贈与財産となります(相続税法8条)。

贈与税の申告とは

原則として、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに申告し、納税しなければなりません(相続税法28条)。

相続時精算課税制度とは

60歳以上の父母又は祖父母などから、18歳以上の子又は孫などに対し、財産を贈与した場合に選択できる制度で、受贈者は、贈与を受けた時に、通常通り贈与税を支払うか(暦年課税といいます)、届出により相続時精算課税制度を利用することができます。

相続時精算課税制度を選択すると、2500万円までは贈与税非課税となり、2500万円を超えた部分に対しては20%の税率で贈与税が課せられます。将来、相続の時に相続財産と贈与された財産を合算して相続税を計算するというものです(相続税法21条の9~18)。 (既に支払われた贈与税額は、相続税額から控除されます)
この制度を利用すると、被相続人が生前に贈与した時の贈与税は軽減しますが、相続時に、贈与された財産と相続財産に加えた金額に相続税が課税されることになります。

この制度を選択した以降、2023(令和5)年までは、暦年贈与の基礎控除110万円を利用することができませんでしたが、改正により2024(令和6)年以降は、毎年基礎控除110万円を控除することができるようになります。

相続時精算課税制度を利用した場合

相続時精算課税制度を利用した場合、贈与された財産の価値については、贈与時の時価で相続税を計算します。そのため、贈与された財産の価値が、相続時までに上昇していれば有利になります。また、贈与された財産が生み出す利益(株式を贈与したら配当金、賃貸用マンションを贈与したら賃料等)は、受贈者のものになり相続財産に含まれませんから、相続税の節税になることもあります。

その反面、贈与された財産の価値が贈与時よりも低下していた場合でも、贈与時の価格で相続税課税されてしまうため不利になってしまいます。さらに、適用対象者が絞られていること、一度利用してしまうと相続時まで継続して適用され取り下げることはできない等、いくつかの条件がありますので、税理士等専門家に相談の上ご判断いただくことをお勧めいたします。

本ページの内容は、2023年7月時点の法令をもとに作成しています。

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