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遺産分割協議書 ひな形書き方のポイントと書式ダウンロード

代表弁護士山田 冬樹
<監修者> 代表弁護士 山田 冬樹
依頼者が「やってほしいこと」と、弁護士が「できること」をすり合わせ、依頼者の納得を得ながら、現実的にできる最大限の成果を目指し、最終的に「この人に頼んでよかった」と思われるように努めています。

どの遺産を誰がどれだけ取得するかを相続人間で話し合うことを遺産分割協議といいます。後日争うことがないように、口約束で済まさず、遺産分割協議書を作りましょう。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。行方不明の相続人がいれば、裁判所に財産管理人を選任してもらい、財産管理人と協議した上で遺産分割協議書を作成する必要があります。
ここでは、遺産分割協議書の基本的なひな形と書き方を詳しく説明します。

遺産分割協議書は自分で作れる?

遺産分割協議書を自分で作ることは可能ですが、遺産分割協議書には、専門家以外には気づくことが難しいポイントが存在します。代表的なポイントに、借金などのマイナスの財産の取扱いがあります。そもそも遺産分割協議で分けることができるのはプラスの財産だけとなっているため、例えば「長男が借金も含めて全財産を相続する」と、3人兄弟で決めたとしても、マイナスの財産である借金は3人の合意とは関係なしに3分の1ずつ負担することになります。また、不動産の分け方も難しいポイントです。不動産を売却して売却金を皆で分ける(換価分割)か、単独で相続した一人が他の相続人に金銭で補償する(代償分割)かといった分け方をきちんと記載する必要があります。
そのほか、細かい遺品がある場合は「その余の財産を別途協議して分割する。」として、遺産分割協議書から除外するやり方もあります。
このように、専門家以外には気づくことが難しいポイントがありますので、遺産の内容が複雑な場合、全員の意見がまとまった段階で、弁護士に遺産分割協議書を作成してもらうのがいいでしょう。

遺産分割協議書のひな形

遺産分割協議書の例として、相続人2名で、遺産として土地、建物、預貯金、有価証券、自動車がある場合の、ひな形を用意しました。

このひな形では、相続人2名をそれぞれ甲、乙とし、甲が土地、建物、自動車を相続し、乙が預貯金、株式などの有価証券を相続するケースで作成してみました。
Word形式でダウンロード可能になっていますので、ご自身で作成する際の参考例としてご活用ください。

また、相続人2人のうちの一方が全ての財産を取得し、債務(借金)の履行も引き受けるケースでは以下のようなひな形を使いますので、あわせてご活用ください。

遺産分割協議書を作成する際のポイント

相続する財産を目録に書き込む際には、その財産を特定するために必要な情報を、漏らさず書く必要があります。ここでは、財産の種類別に書き方のポイントについて解説していきます。

1 不動産の書き方

(1) 一戸建ての場合

不動産(一戸建て)については土地と建物に分けた上、お近くの法務局で登記簿謄本を取得し、登記簿謄本の記載事項と一言一句同じように書きます。両者の記載に齟齬があると、最悪の場合は登記できないこともありえます。

建物は一つでも、その敷地が複数に分かれていることがよくあります。また土地が袋地になっていて、私道部分を所有している場合もあります。そうした土地の見落としがないか、固定資産税納税通知書や名寄帳(市役所が管理している課税不動産の一覧)を調べてください。

(2) マンションの場合

新しいマンションや団地は、土地と建物が一体化して登記が作られており、独特の表記が必要です。

(土地の表示)
・所 在 〇〇区〇〇 〇丁目
・地 番 〇〇〇番〇
・地 目 宅地
・地 積 〇〇〇.〇〇㎡
・持 分 ○○○○○○分の○○○○○(敷地権の割合)
(一棟の建物の表示)
・所 在 〇〇区〇〇 〇丁目 〇〇〇番地〇
・構 造 鉄筋コンクリート造陸屋根3階建
・床 面 積 1階 〇〇〇.〇〇㎡
     2階 〇〇〇.〇〇㎡
     3階 〇〇〇.〇〇㎡
 (専有部分の建物の表示)
・家屋番号 〇〇 〇丁目〇〇〇番〇の〇
・建物の名称 〇〇〇
・種 類 居宅
・構 造 鉄筋コンクリート造1階建
・床 面 積 〇階部分 〇〇.〇〇㎡

古い団地の場合、土地と建物の登記が別になっていたり、集会所、管理事務所、給水塔などが別登記になっていることがあります。こうした場合、別登記の部分を別途記載することが必要です。

(3) 共有持ち分がある場合

被相続人が土地・建物の権利のうち「二分の一」だけ所有していたような場合、遺産分割協議書にもその旨を記載する必要があります。
土地の所在・地番・地目・地積を記載したうえで、最後に「持分 二分の一」と記載します。

土地
・所 在 〇〇区〇〇 〇丁目
・地 番 〇〇〇番〇
・地 目 宅地
・地 積 〇〇〇.〇〇㎡
持分 二分の一

2 預貯金の書き方

どの預金を誰が相続により取得するのかを示すため、金融機関名、支店名、預金の種類(普通預金、定期預金等)、口座番号を必ず記載しましょう。記載方法に不備があると預金の払い戻しができないことがあるため、遺産分割の合意内容や遺産分割の対象となる口座や預金について明確にする必要があります。銀行によって、ルールが違うため、事前に銀行にどういった方法をとったらいいか確認してください。

●銀行●支店
普通預金 口座番号●●●●
口座名義人 ●●

一つの口座に預金が集中している場合の記載方法には、次の3つのパターンが考えられます。

<パターン 1>

以下の預金口座につき、うち、●円をAが取得し、●円をBが、その余をCが取得する。

預金額は日々変わりうるため、Cに「その余」を寄せることで金額の変化に対応させています。

<パターン 2>

以下の預金口座につき、相続人A、B、Cが、それぞれ3分の1の割合で取得する。
Aは代表相続人として、以下の預金口座の解約及び払い戻し又は名義変更の手続きを行い、B及びCの取得分について、別途B及びCの指定する口座に振り込んで引き渡す。

<パターン 3>

以下の預金口座をAが取得することとし、AはB及びCに対し、その代償金として各金●万円を令和●年●月●日までに、別途B及びCの指定する口座に振り込んで引き渡す。

なお、遺産分割が終了する前であっても、各相続人が当面の生活費や葬儀費用の支払いなどのためにお金が必要になった場合に、相続預金の払い戻しが受けられるよう、平成30年7月の民法等の改正により、相続預金の払い戻し制度が設けられましたので、この制度を利用されたい方は弁護士にご相談された方がよいでしょう。

3 有価証券の書き方

被相続人が所有している株式などの有価証券を確認したい場合は、証券保管振替機構に所定の方法で請求すると、どの証券会社、信託銀行に口座を開設しているのかが分かります。次いで、口座のある証券会社等に連絡し、どのような有価証券を保有しているかを調べます。確認できた記録に基づき、株式の種類等を記載する必要があります。 株式を分割して取得する場合は、現金化した上で分配するのが無難です。

以下の資産をAが取得することとし、AはB及びCに対し、その代償金として、売却金ないし払戻金(税引後、仲介手数料差引後の金額)の3分の1(1円以下は切り捨てる)に相当する金額を令和●年●月●日までに、別途B及びCの指定する口座に振り込んで引き渡す。
●●証券●●支店の被相続人口座の以下の株式等の資産
・●●株式会社   株式●●●●株
・●●株式会社   株式●●●株
・その他、預託している被相続人名義の全財産

(注)株の配当金や売却金はMMFという信託商品に代わっているためこの記載が必要です。
証券会社各社によってルールが違うため、必ず、どのような記載がいいかを各社に事前に確認してください。

4 自動車の書き方

自動車は、自動車検査証より、「自動車登録番号又は登録番号、車台番号」を明記し、特定します。

・自動車登録番号 品川●あ●●●●(軽自動車は車両番号、普通車は登録番号と記載)
・車台番号 ABC-1234567

陸運局は車両を特定するのに上記2つの事項だけの記載を求めています。

移転登録用の遺産分割協議書は運輸局のホームページでダウンロードできます。

5 借金・債務の書き方

遺産分割協議で分けることができるのはプラスの財産だけです。したがって、マイナスの財産である借金・債務を誰が相続すると記載しても効力はないため、誰が履行を引き受けるかという体裁で記載する必要があります。

A、Bの二人で相続した借入金の返済を、Aが全額引き受ける場合

Aは、Bに対し、被相続人が◯◯銀行に対して令和●年●月●日付金銭消費貸借契約に基づき負担した借入金債権(相続開始日残元金●円)のうち、Bが相続により承継した2分の1の負担部分の履行を引き受け、Bに代わってこれを弁済する。

6 後から見つかった財産について

遺産分割協議の際に認識していなかった財産が、協議成立後に時間が経ってから見つかる場合があります。
新たな財産が見つかった場合に備えて、遺産分割協議で、相続人の一人が単独で取得する旨を予め決めておく方法と、後日、改めて遺産産分割協議をする方法があるので、いずれかを記載しておきます。

単独で取得する者を予め決めておく場合

● 本協議成立後に新たに遺産が見つかった場合は、すべてAが取得する。

後日、改めて遺産産分割協議をする方法

● 本協議成立後に新たに遺産が見つかった場合は、改めて相続人全員での協議の上分割する。

その他の注意事項

署名と捺印について

後日争いが起こることを避けるためには、遺産分割協議書には実印で捺印し、印鑑証明書のコピーを添付するといいでしょう。
特に、不動産の移転登記、預金の払い戻し、自動車の移転登録等が行われる場合、関係機関から印鑑証明書の提出を求められるので、実印での捺印、印鑑証明書原本の取得は必須です。
遺産分割協議書には相続人全員が署名捺印することで効果を生じますが、相続人が遠隔地に分散しているため一堂に会せない場合には、それぞれが、遺産分割協議証明書を作成すると言う事も可能です。

複数ページになる場合は「契印」を

遺産分割協議書が複数ページにわたる場合、遺産目録を別紙でつける場合、それが一体のものであることを証明するため、全員が各ページにまたがって捺印すること(契印)が必要になります。この場合、署名捺印に使用した印と同じものを使います。

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