遺留分とは最低限もらえる遺産の取り分 | 割合と計算方法を解説

代表弁護士山田 冬樹
<監修者> 代表弁護士 山田 冬樹
依頼者が「やってほしいこと」と、弁護士が「できること」をすり合わせ、依頼者の納得を得ながら、現実的にできる最大限の成果を目指し、最終的に「この人に頼んでよかった」と思われるように努めています。

ここでは、遺留分とは何か、遺留分が認められる相続人の範囲、遺留分の算出方法などについて紹介します。
遺留分に関する正しい理解があれば、被相続人(亡くなった方)が残した遺言書がある場合でも、最低限もらえる取り分を請求することができるかを適切に判断することができます。

遺留分とは

遺留分とは、一定範囲の相続人が最低限もらえる遺産の取り分です。これは、相続人の生活保障のために相続人に法律上認められた権利であるため、被相続人は、遺言によって相続人の遺留分を侵害するような遺産の処分行為を行なうことができません。
そのため、遺言によって遺留分を下回る遺産しかもらえなかった相続人は、遺留分侵害額請求を行い、権利の回復を図ることができます。

遺留分における相続人の範囲

遺留分は、すべての相続人に認められるものではありません。相続人となり得る者の中でも、被相続人と縁遠い関係とみられる者については、そのような者の生活の保障を図る必要性は低いという理由により、遺留分は認められません。

認められる相続人

  • 配偶者は、常に遺留分が認められます。
  • (代襲相続人含む)にも遺留分が認められます。
  • 親、祖父母といった直系尊属にも遺留分が認められます。

これらの相続人は、一般的に被相続人との関係が近く、被相続人の遺産により生活保障を図る必要性が高いため、遺留分が認められています。

認められない相続人

  • 兄弟姉妹は被相続人との関係が遠いとみられるため遺留分が認められません。
  • 甥姪についても遺留分は認められません。

遺留分の割合について

各相続人に遺留分として保障されるのが具体的にどの程度の金額なのかを算出するに当たっては、民法の規定を読み、総体的遺留分個別的遺留分を把握する必要があります。

総体的遺留分

民法1042条1項では、遺留分は、

親などの直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
配偶者、子が相続人である場合 2分の1

と定められています。

これは、例えば相続人が配偶者Xと子Y、Zの合計3人であるケースでは、この3人全体に、遺産の2分の1の取り分が最低限保障されているということを意味します。
この「相続人全体に保障される遺留分」のことを「総体的遺留分」といいます。
総体的遺留分率は民法1042条1項に定められているため、簡単に確認することができます。

個別的遺留分

次に、XやY個人に保障される個別の遺留分はどうなるのかについてですが、これは民法1042条2項に規定があり、「総体的遺留分×法定相続分」という式で算出します。
これにより算出される「相続人個人に保障される遺留分」のことを「個別的遺留分」といいます。

遺留分の具体的な計算例

2つのケースを例として、各相続人の個別的遺留分を算出してみます。

【事例1】相続人が、配偶者X、子Y、Zの3人のケース

1. まず総体的遺留分を確認します。

このケースは、「直系尊属のみが相続人である場合」に当てはまらないため、X、Y、Zの3名に確保されるべき総体的遺留分は、2分の1です。

2. 次に個別的遺留分を算出します。

配偶者Xの法定相続分は2分の1です。子Y、Zの法定相続分は各4分の1です。
したがって、各相続人の個別的遺留分は以下のとおりです。

  • X: 総体的遺留分2分の1 × 法定相続分2分の1 = 4分の1
  • Y: 総体的遺留分2分の1 × 法定相続分4分の1 = 8分の1
  • Z: 総体的遺留分2分の1 × 法定相続分4分の1 = 8分の1

つまり、事例1においては、Xには最低でも遺産の4分の1の金額が保障され、YとZには最低でもそれぞれ8分の1が保障されることになります。

・遺留分

続柄 総体的遺留分 法定相続分 計算式
配偶者X 2分の1 2分の1 2分の1 × 2分の1=4分の1
子Y 2分の1 4分の1 2分の1 × 4分の1=8分の1
子Z 2分の1 4分の1 2分の1 × 4分の1=8分の1

例えば、遺産総額が3000万円の場合、遺留分としてもらえる額はそれぞれ次の通りになります。

・遺留分としてもらえる額

続柄 金額 計算式
配偶者X 750万円 3000万円×4分の1
子Y 375万円 3000万円×8分の1
子Z 375万円 3000万円×8分の1

【事例2】相続人が、父A、母Bの2人のケース

1. まず総体的遺留分を確認します。

このケースは「直系尊属のみが相続人である場合」に該当するため、A、Bの2名に確保されるべき総体的遺留分は、3分の1です。

2. 次に個別的遺留分を算出します。

父A、母Bとも法定相続分は各2分の1です。
したがって、各相続人の個別的遺留分は以下のとおりです。

  • A: 総体的遺留分3分の1 × 法定相続分2分の1 = 6分の1
  • B: 総体的遺留分3分の1 × 法定相続分2分の1 = 6分の1

つまり、事例2においては、A、Bには最低でもそれぞれ遺産の6分の1の金額が保障されることになります。

・遺留分

続柄 総体的遺留分 法定相続分 計算式
父A 3分の1 2分の1 3分の1 ×2分の1=6分の1
母B 3分の1 2分の1 3分の1 × 2分の1=6分の1

例えば、遺産総額が3000万円の場合、遺留分としてもらえる額は次の通りになります。

・遺留分としてもらえる額

続柄 金額 計算式
父親 500万円 3000万円×6分の1
母親 500万円 3000万円×6分の1

遺留分侵害額請求

例えば、相続人が配偶者X、子Y、Zの3人であるにもかかわらず、被相続人が、「生前とてもお世話になったWに全財産を譲る」という遺言を残した場合、この遺言をそのまま適用すると、相続人の3名は、最低限保障されるはずの遺留分相当額すら受け取れないことになります。この状態のことを「遺留分が侵害される」と表現します。
このように遺留分が侵害された場合、X、Y、Zは、Wに対し、「遺留分相当額のお金を払ってほしい」という趣旨の遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求権を行使する方法

遺留分侵害額請求権を行使するにあたっては、一般的に侵害している相手に内容証明郵便を送り、遺留分侵害額を支払うよう請求することになります。それでも、支払われない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停でもまとまらない場合は、訴訟を提起することになります。

遺留分侵害額請求権の時効

遺留分侵害額請求ができる場合であっても、遺留分を侵害された相続人が、①相続が開始したこと、②遺留分を侵害する遺贈・贈与があったことの2点を知った時点から1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ、遺留分侵害額請求権は時効によって消滅してしまい、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。これを「消滅時効」といいます。
被相続人が亡くなり、自分が相続人になったが、自分がもらえる遺産が不当に低額になっているという場合には、至急弁護士にご相談ください。1年間という期間は非常に短いため、消滅時効の完成をさせないよう行動する必要があります。

また、①②を知らなかったとしても、相続が開始した時から10年を経過した場合には、やはり遺留分侵害額請求をすることができなくなります。これを「除斥期間」といいます。

以上の通り、1年以内または10年以内に遺留分侵害額請求権を行使して初めて、侵害額をいくら支払えという債権が成立し、成立後5年以内に相手方に承諾させるか、裁判するか、差押をしないと時効になってしまいます。

一見すると10年間という期間は長いように見えますが、被相続人と縁遠い関係の場合は、被相続人が亡くなったことに気づかず数年が経過していることも多いため、被相続人が亡くなったことに気づいた場合にはなるべく早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

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