遺産分割

遺産分割調停のメリットとデメリット

代表弁護士山田 冬樹
<監修者> 代表弁護士 山田 冬樹
依頼者が「やってほしいこと」と、弁護士が「できること」をすり合わせ、依頼者の納得を得ながら、現実的にできる最大限の成果を目指し、最終的に「この人に頼んでよかった」と思われるように努めています。

遺産分割調停は、相続人同士で遺産分割について話し合いでまとまらない場合にとる法的手続です。このページでは、遺産分割調停とは何か、そのメリットとデメリット、遺産分割調停にかかる時間、その際に気をつけることについて説明します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、相続人同士で遺産分割について話し合いでまとまらない場合に、相続人が他の相続人を相手方として家庭裁判所に申し立てる手続きです。調停手続では、裁判官(正しくは審判官といいます)、調停委員(民間の有識者)2名の合計3名で構成される調停委員会が、申立人と相手方の双方から意見を聞き、意見を調整し、合意が成立するよう手助けをします。裁判官は普段は調停に立ち会わず、中間合意をする際や、調停がまとまりそうになったときぐらいしか立ち会うことはありません。

当事者同士が遺産分割の内容について合意すると、裁判官が合意内容を確認した上で、調停条項にまとめ、双方がその内容に合意すると調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同一の効力を持ちます。

<裁判所が公開している各種書類の雛形>

調停委員とは

調停では、裁判官のほかに公正中立な第三者である調停委員(男女1名ずつの2名)が選任されます。調停委員は、弁護士、司法書士、元裁判官、元裁判所職員、元銀行員、元公務員等、法的な知識を有する人、社会人として豊富な経験知識の持ち主が選ばれます。法的調停委員の役割は、当事者の自主性を重んじつつ、法律的な評価に基づき、実情に応じて助言し互いの歩みよりを促すことです。

公益財団法人日本調停協会連合会の公開情報によると、家事調停の調停委員の約7割が60歳代、約2割が50歳代です。年齢別や職業別の内訳について詳しく知りたい方は、下記のリンクよりお確かめください。

参考:調停委員はどんな人?(公益財団法人日本調停協会連合会)

遺産分割調停のメリット

相手方と顔を合わせなくてよい

調停委員が仲立ちするため、相手方との直接交渉の必要がなく、裁判所ではそれぞれ別室で待機するため、相手方と顔を合わせることを避けることができます。

第三者が入ることで冷静な話し合いができる

当事者間では感情論が先行して話し合いが進まないケースが多いです。調停手続では調停委員が間に入って、感情論を押さえるよう当事者を説得します。調停委員は、どちらからも意見をよく聞き、法的な助言をします。調停委員が双方の納得がえられるような落としどころを見つけようと努める中で、当事者は冷静な話し合いをすることができます。

非公開なのでプライバシーが守られる

調停は非公開であり、調停委員には守秘義務があるので、調停を行なったことを人に知られず、プライバシーが守られるので、安心して手続きを進められます。

調停調書は、確定判決と同じ効力

調停が成立した場合に作成される調停調書は確定判決と同一の効力を持ちます。

遺産分割調停のデメリット

必ずしも合意できるとは限らない

調停手続は合意を目指した話し合いの場であり、当事者間の主張が折り合わない場合、調停不成立となることもあります。調停不成立の場合は、自動的に審判手続に移行します。

関連リンク遺産分割審判とは

遺産分割まで時間がかかる

調停は、一般的に1ヶ月に1回のペースで行なわれるため、時間がかかります。2018年の遺産分割調停の平均審理時間(審判を含む)は、11.2か月で、平均約1年はかかっています。

参考:家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等

遺産分割調停の流れ

(1)相続人の範囲→(2)遺産の範囲→(3)遺産の財産的評価→(4)特別受益・寄与分の存否→(5)具体的な財産の分配方法の決定と、段階を踏み、最終的に話がまとまれば、それを調停調書という公的書面にします。

(1)相続人の範囲

まずは、誰が相続人であるかを特定する段階を踏みます。相続人を特定するために必要な戸籍謄本が全て取得できているかどうかを確認します。弁護士が代理人として申し立てる場合、戸籍を全て揃えた上で申し立てますので、この点について相続人の間でもめることはありません。

(2)遺産の範囲

相続人の範囲を特定したら、次は分割の対象となる遺産には何が含まれるかを決める段階に進みます。

例えば、ある相続人が、亡くなった親の預金通帳を資料として出したものの、別の相続人から、他にも預金があるのではないか、あるいは、他に土地があるのではないかといった声が上がり、争いが生じることがあります。ただし、相続人が単に「もっと他に預金があるはずだ」と言ったところで、裁判所が他の預金を調査してくれることはありません。まずは、自分で銀行に問い合わせて他の口座がないか調べる必要があります。調査の過程で、ある銀行に預金していたことは分かったものの、どの支店かということまでは分からないという場合、心当たりのある支店全てを調査する必要があります。

土地については、名寄帳(なよせちょう)を調べるのが有効です。名寄帳とは、役所が課税の対象となっている固定資産(土地・家屋)を所有者ごとに一覧表にまとめたもので、資産の所在地、課税標準額、評価額、課税額等の記載があります。ただ、不動産の所在地を管轄する役所ごとに名寄帳は作成されているため、不動産が複数の市町村に散在するときは、各市町村の名寄帳を確認しなければなりません。

株式については、まず証券保管振替機構(通称ほふり)に照会請求すると、被相続人が株取引していた証券会社が明らかになります。その上で、取引していた証券会社に取引内容の開示を求めると、どういう株取引を行なっていて、現在どのような株を持っているかが分かります。

被相続人が高度の認知症になっていて、同居の相続人が預金を引き出していた場合

被相続人が高度の認知症になっていた当時に、同居の相続人によって預金から多額の金額が引き出された場合、その相続人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を遺産として分割の対象とすることができる可能性があります。こうした調査は、その扱いに慣れている弁護士に依頼するとスムーズです。

(3)遺産の財産評価

分割対象となる遺産の範囲に合意したら、今度はそれぞれの遺産の財産評価を決める段階に進みます。現金、預貯金は、特に争いになりませんが、不動産、株式、宝飾品等を巡って争いになるケースがあります。

不動産

不動産については、鑑定するとお金がかかるため、当事者双方が不動産業者に作ってもらった査定書を証拠として提出し、それをもとに協議し、評価額について合意するのが一般的です。しかし、合意に至らない場合は、裁判所が選ぶ鑑定人に価格を調べさせます。その場合、鑑定費用として数十万から百万円かかる場合もあります。

株式

株式は実際に遺産分割する時点での取引価格が基準になります。株式には、価格変動リスクや売却時に課税負担が生じることもあります。株式を売却する場合には、こうしたリスクを考慮して相続人全員の合意のもと、行なうようにしましょう。

また、非上場株式の場合、金銭評価は大変です。財産評価がまとまらず、裁判所が鑑定人を選任して、価格を調べさせるとその費用が百万円を超える場合もあります。

宝飾品等

宝飾品とか着物は、取得価格は高額ですが、取引価格は低廉です。買った時の金額で数億円した着物が100万円にもならないといったこともあります。こうした評価は、専門的知識がないと上手く行かず、調査も思うように進まないこともありますので、弁護士に依頼された方がいいでしょう。

(4)特別受益・寄与分の存否

遺産の財産評価についても合意ができると、次は各相続人の取得分の調整の段階に進みます。通常、遺産は法定相続分に基づいて分割されますが、「特別受益」や「寄与分」があると取得分に影響を与えます。

特別受益

特別受益とは、「特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈を受けているときの利益のこと」をいいます。例えば、生前に一人だけ、親から住宅購入資金の援助、借金整理、大学の学費の支出などをしてもらっている場合、その分も遺産に含めて分割する必要があります(特別受益の争い)。

関連リンク特別受益とは

寄与分

寄与分とは、「特定の相続人が、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与、貢献した場合の取り分のこと」をいいます。

また、生前に被相続人の家業をほとんど小遣い程度の給料で手伝ったり、親の介護に努め、その結果、遺産が減るのを防いだり、遺産を増やすことができた場合は、そうした特別な貢献を遺産分割上考慮する必要あります(寄与分の争い)。

ただ、生前贈与については特別受益としないという意思を、被相続人が明らかにしていた場合は、特別受益とは扱わないこととされています。婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、生前に、配偶者に居住不動産を贈与したときは、被相続人が贈与について特別受益とはしない旨の意思を表示したものと推定されます。

法的知識がないとこうした主張をすることもできず、証拠も用意する必要があるため、弁護士を立てて行なわないと、本来認められるはずの主張が認められないこともあります。

(5)遺産の分配方法

各相続人の取得分の調整が済んだら、遺産の分配方法を決める段階に進みます。

例えば、主な遺産が不動産のみの場合、不動産を売却して現金に換え、それを各相続人が法定相続分に応じて取得する(換価分割)か、あるいは相続人の一人が不動産を単独で取得する代わりに、他の相続人に法定相続分に相当する金額を払うこと(代償分割)が考えられます。

ほかにも、被相続人が会社を経営していた場合、株式をどうやって分割するのが妥当かなど難しい問題が生じることがあるので、遺産の分配方法について弁護士に依頼した方がスムーズに進むでしょう。

中間合意

遺産分割調停は(1)~(5)の順番で進められ、各段階において合意ができた場合、その内容を「中間合意」という形で調書にすることがよく行われます。こうしておくと、同じ議論が蒸し返されることがなく、調停をスムーズに進めることができます。後になって中間合意を覆そうと思っても、認められないので、中間合意をするときは慎重にする必要があります。

遺産分割調停で弁護士をつけるメリット

遺産分割調停は当事者本人で申し立てることができます。しかし、本人で対応することに限界を感じて、相談に来られる方も多いです。弁護士に依頼した場合の主なメリットを紹介します。

裁判所に出向かずにすむ

調停は、基本的に平日日中に行なわれるので、仕事をしながら対応するのは大変です。弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として裁判所に出向いて依頼者の代わりに意見を述べることができます。そのため、依頼者は裁判所に出向かずにすみます。

法的判断に基づいた対応が可能

特別受益や寄与分などを主張する場合、法的な知識や裏付け資料が必要になります。また、相手方の主張にどう対応していくかなどで法律的な判断が必要となります。こういったことから、ご本人だけで対応するには限界があるケースもあります。遺産分割がうまくまとまらず調停手続に進む場合、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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